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最終更新日:2026年1月9日

特別展「高松城 ―海にのぞむ城のものがたり―」:御座船「飛龍丸」と高松城

特集

瀬戸内海をのぞむ城・高松城に象徴されるように高松藩と海には深い関わりがあります。船もまた海と高松藩をつなぐ重要なアイテムです。ここでは高松藩主専用の船を描いた絵図を中心に、船と高松城の関係を紹介します。

御座船「飛龍丸」を描いた絵図

帆に風をうけて1艘の船が海上を進んでいます(図1)。描かれている船は高松藩の御座船「飛龍丸」で、大きさは船長約29メートル、幅8.2メートルであることが書込みから分かります。ちなみに、高松と女木・男木島をつなぐフェリー「めおん」が全長32.5メートル、幅10.5メートルです。

「飛龍丸」が高松藩初代藩主・松平頼重の命で造られたのが寛文9年(1669)、その後「飛龍丸」は4回ほど造り替えられています。造り替えの際に記録のために作成されたのが、香川県指定有形民俗文化財の「高松藩飛龍丸船明細切絵図」です。海上を進む「飛龍丸」の図はその内の1枚になります。

絵図は全部で8枚あり、宝暦4年(1754)の造り替えの時に描かれた絵図3枚、寛政4年(1792)の造り替えの絵図5枚から成っています。図1は宝暦の絵図の1枚で、他に船の屋形の内部の装飾を1階と2階に分けて描いた絵図(図2)などがあります。寛政の絵図には、船の側面図や平面図(図3)、船尾の立面図と造船に使った板に関する図があります。色鮮やかに仕上げられ、家紋は胡粉で盛り上げた上に金箔を貼って表現するなど手の込んだ図になっています。

「飛龍丸」の外観がよく分かる図1では、松平家の家紋が染め抜かれた赤い幕や紅白の幕、金文字で「飛龍丸」と記された額などが目立ちますが、鑓や弓、鉄炮といった武器も並んでいます。豪華さと武力の両面をもったのが御座船だったのです。

図1高松藩飛龍丸船明細切絵図 惣図
(香川県指定有形民俗文化財、公益財団法人松平公益会蔵)

宝暦の「飛龍丸」の内装を表したのが図2です。御座船には藩主の居場所となる屋形が設けられ、金をふんだんに使った襖絵や障壁画が描かれていました。

図3は寛政の絵図で、「飛龍丸」の平面図。図の上側、茶色に塗られた場所は蒸し風呂(サウナ)、下側には厠(トイレ)があったことが示されています。料理をする場所もあったようです。

御座船は外側も内側も華やかに飾られ、藩主が快適に過ごせるような設備が整えられていたのです。

図2 同 艫真向之図・御屋形之図 部分
図3 同 平絵図

戦いの船からの変わり身

絵図から分かる「飛龍丸」は、ぜいたくな客船というイメージですが、御座船のベースとなったのは関船という軍船の一種です。関船は戦国時代には安宅船と呼ばれる大型軍船の周囲を固める役割を果たす中規模の軍船でした。江戸時代になると安宅船のような大型軍船の建造が禁止され、関船が藩主の船の主流となりました。

とはいえ、江戸時代は合戦が行われなくなる時代。関船が軍船として活躍する機会は少なくなります。戦いのための関船が、豪華に飾り付けられ、過ごしやすいように変化したのが御座船なのです。

では、御座船はどこで活躍したのでしょう。

藩主は、自分の治める国元と将軍のいる江戸を1年おきに往復しました。四国や九州を治める藩主は、海を渡らなければならず、御座船を利用しました。華やかな外見ながら本来は軍船である御座船が、大小の船を率いて海上を進むすがたは周囲の目をひき、城と同じように大名の力を示す役割を果たしたのです。

「飛龍丸」と高松城

御座船「飛龍丸」はどこに泊まっていたのでしょう。

「飛龍丸」などの高松藩の船は、現在の高松市大的場付近にあった専用の港に繋がれていました。もともと高松城の西側の外堀が藩専用の港(舟入)でした。高松藩の持つ船の数が増え、明暦2年(1656)から寛文10年(1670)の間に新たに港が造られました(図4)。寛文9年には御座船「飛龍丸」が登場、そして高松城の拡張が行われました。城には新しい天守が完成し、海を見張る「月見櫓」(重要文化財)と海から直接城に出入りする「水手御門」(同)などを備える北の丸や、現在当館が建つ東の丸などが造られました。

初代藩主松平頼重は高松藩を与えられる時に、将軍から直々に「西国・四国の目付(監視役)」となるよう告げられています。重要な航路である瀬戸内海を抑え、将軍家が警戒する四国や九州の有力な大名たちを監視する役割が求められていたのです。

藩専用の港の拡張、新造船の建造、城の拡大と充実は、こうした役割を果たすためにとられた一連の政策として捉えることができます。

この春の特別展「高松城―海をのぞむ城のものがたり―」では高松城と海や船、港との関わりを紹介し、連携企画として、今回紹介した「高松藩飛龍丸船明細切絵図」の全図を常設展「御座船『飛龍丸』」で展示します。あわせてご覧ください。

図4 高松城下屋敷割図 部分(当館蔵)

展示会情報|特別展|高松城 ―海にのぞむ城のものがたり―

会期

4月22日(火)~6月1日(日)

会場

香川県立ミュージアム

開館時間

9:00~17:00(入館は閉館の30分前まで)

※夜間開館 午後8時まで 4/26、5/3、5、10、17、24

休館日

月曜日(5月5日(月・祝)は開館)、5月7日(水)

観覧料

1,200円、前売・団体[20名以上] 1,000円

※玉藻公園と相互割引(団体料金)があります
※瀬戸内国際芸術祭パスポート提示で団体料金
(4/22~5/25)
※高校生以下、県内在住の65歳以上、障害者手帳、
特定医療費(指定難病)受給者証等をお持ちの方は無料

|連携企画|常設展 御座船「飛龍丸」

会期

4月22日(火)~6月1日(日)

会場

常設展示室1

|連携企画|常設展 アート・コレクションニッポンの城

紙版画家 井上員男(1932~2022)の作品「日本の城シリーズ」から四国をはじめ、全国各地の城を選りすぐり、紹介します。

会期

4月15日(火)~6月1日(日)

会場

常設展示室2