Topic コレクションについて
コレクションの意義とは
国内の多くの美術館、博物館には、歴史的な時代背景を知る上で欠くことのできない資料あるいは美術作品が所蔵されており、一般に「コレクション」と呼ばれています。所蔵される資料・作品群は美術館、博物館等の調査研究機関に永年にわたって保管され、調査対象としてその詳細なデータが蓄積されています。また、その調査研究内容とその成果は、逐次、開示として収蔵品展として展示されます。これらの資料及び美術作品は寄贈、購入、場合によっては一定の期間を定めて預かる「寄託」を行うことで、公益性のある資料としての価値づけがされるとともに、将来への歴史的資産の管理と維持の継承という役割に貢献しているのです。
コレクションは決して美術館、博物館の専門職が独占するものではなく、一般公開のほか、あらゆる研究者に対して広く開かれたものでなければなりません。そのうえで、資料管理に関しては、材質や経過年、状態把握を踏まえ、施設構造及び周辺環境に応じた独自の理念のもとにおこなわれなければなりません。つまり作品資料を所有するということだけを捉えれば、コレクションとは永年にわたる管理を背負うことであり、現在の資料のコンディションを未来へと維持していくことにほかならないのです。
資料収集とは、当然のことながら歴史上の、美術作家のすべての資料や作品を所有することを目的とするものではありません。コレクションは研究対象としての価値がより高いものであるべきですが、その価値が高いか否かの基準の在り方には千差万別、様々な意見があるでしょう。例えば、既収蔵品、あるいは歴史的な事実とされる何らかの動向についてその意味や背景となる事実が裏付けられ、補完するために欠かせないものであるかどうか、といった観点が挙げられます。
昨今の公立美術館をとりまく状況
1980年代、日本列島は、更なる経済成長を遂げながら、後半期には一気に花開くように、好景気に沸きました。元号が昭和から平成に改まり、バブル崩壊に至るまでのあいだ、全国各地で公立美術館が続々と建設されていきました。
全国の公立美術館は高額な美術品を購入、所有することが地域文化の豊かさを示す指標となっていました。美術鑑賞は、庶民の高尚な文化活動であり、学校教育現場との連携が謳われ、美術教育は美術館の役割の一端を担うことになります。こうした地方行政による地域貢献を謳論みながら、一方で公立美術館の多くは欧米型の美術館に倣い、主に西洋美術における世界的に著名な作家の作品をコレクションに加えることが観光の活性化に貢献すると考えていました。実際に、観光資源としての美術館の在り方に文化行政がシフトしていくようになったのはバブル後のことであり、人口減少による収入減を補うための観光客誘致に美術館が大いに活用されるようになったのです。
全国には、西洋美術を中心とした収集方針を掲げる美術館が氾濫し、他館と同質の美術品をコレクションすることが蔓延していました。他の美術館と同等レベルの品質の美術品を所持することを美術館の第一義として求めたのです。地域への教育的貢献を目指すべき地方の美術館の在り方が次第に希薄になっていったことは、憂慮すべきことであり、これにより、全国のどの美術館へ行っても同じようなコレクションが常設展示室に並ぶことになるのです。
現在では、国内外の現代美術をコレクションの軸とする公立美術館が開館(岐阜県現代陶磁美術館(’02)、金沢21世紀美術館(’04)、青森県立美術館(’06)、アーツ前橋(’13)、富山県美術館(’17))するなど、地域性を強く打ち出した新世代の美術館は、これまでに培ってきた収集方針を顧み、現代のアートシーンを見据えた、将来性のあるコレクション形成について、積極的に取り組み始めています。
県立ミュージアムのコレクション
当館には、美術作品及び歴史・民俗資料等あわせて約300,000点が所蔵・管理されています。これらの資料のなかでも、おおむね近代以降の美術品は1,800点に及び、香川県の美術動向にまつわる履歴を垣間みることができます。コレクションは、絵画、彫刻、工芸などの幅広いジャンルに及び、明治以降の香川を代表する作家たちを網羅的に収集しています。
近年では、将来を期待する若い作家も登場し、国内外で華々しい活動を繰り広げています。こうした若い作家は、自身が生きる時代をいかに理解し、制作活動を踏まえて証言しているのか、多様な価値観が噴出する現在、社会性を孕んだ表現のあり様について自らに問い続けています。私たちもまた、作家たちの心を突き動かす表現活動に触れ、造形的な新しい試みのなかに、今の時代を見出すことができるでしょう。
(専門学芸員 田口 慶太)