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最終更新日:2026年1月9日

香川県立ミュージアム10周年記念コレクション展 目からうろこのミュージアム! PartⅡ いつものくらし これ、いいね。

特集

私たちの生活の中で欠かせない衣・食・住。本展は、人の営みの三原則ともいえるこれらのキーワードに焦点を当て、私たちは、いかにくらしのなかの潤いや心の安らぎを求めてきたかについて検証しようとするものです。展示は四つのカテゴリに分けて、まずは、私たちの生活空間を客観的な視点で見つめ直すために、時代や地域性を越えて異空間化された設えのなかで生活に欠かせない様々なモノが、どのように私たちの目に映るのかを体験的に味わってもらいます。そして季節ごとの行事や催しを通して人とモノが関わる特徴的な時代性の実態を紐解きます。

県立体育館椅子 剣持勇 当館蔵

“もてなす”というある意味で習慣化された行為は、相手に何かを積極的に伝える個人的な事情によって催されるもので、拘束力がない“緩い”儀式であり、観て、味わい、楽しむことを前提に特別に設えられた場面で美的な感性を共有しようとするものです。心の潤いという意識の在り様によって、モノは華やかさを発揮し、装飾的に私たちの生活を彩ります。また、懐かしさに触れた時の憧れに近い心の高まりは、さまざまな感情を呼び覚ますことになるでしょう。こうした場面を創造するのは、現代のクリエイターたちなのです。このような卓越した現代の職人によって、歴史的な意匠は反芻され、時代性を取り込むデザインへと還元されていくのです。

この展覧会では、モノの見かたや対峙の仕方について鑑賞者自身に提案し、誘発することを目指します。展示されるモノは、日常のごくありふれたものであり、展示会場の非日常的な設えによってモノたちの本来の意味は網膜上から一度乖離し、現実から切り離されることで、より根源的なモノの実態を露わにします。展示室では、この少し不可思議な視覚的体験を通してモノが持つ普遍性と対峙することとなり、私たち観る者は自らの持つ潜在的な感性の芽を育むことになるでしょう。今回の展示では、民俗資料を中心に据えて、日常と非日常のはざまにある美的感情の介在する職人技や製作者の存在を意識し、意匠や装飾性と地域社会という観点から捉える展示空間をご覧いただきます。

第1章 いつも日和 わたしのお気に入り時間 くらしのヒント

この章は、今回の展示の導入部分として、“くらし”をテーマに架空の生活空間を再現し、私たちの暮らしそのものを客観的に見つめ直そうとするものです。章解説は、できるだけやさしく緩い詩文調で親しみやすいことばを展示空間に重ね合わせ、ふだん気付くことのない“くらし”の臨場感に理想的な生活スタイルを夢想してみては、という問いかけに始まります。戦後まもない頃の、私たちの知らない近い過去は、少し異空間でありながら、身近なこととして体験的に振り返ることができます。

第2章 身だしなみ百貨 オシャレ和服のルーツ

この章では、昭和の暮らしぶりを振り返り、そのお洒落度を今の私たちと比較してみることを提案します。お洒落の原点であるさまざまな和服の意匠デザインに着目し、和の生活スタイルと結び付けます。染織の技術を駆使した華麗なわざと美への執着に、心躍る豊かなくらしへの憧れと導きが感じられます。現代の技術革新によって理想的な表現を手に入れることができました。しかし、これにより手わざによる感覚的なテクスチュアは必要とされなくなってしまいました。このままではモノづくりの精神を見失うことになりかねません。ここでは、モノづくりの時代を振り返り、その生い立ちや目的、作り手のこだわりと享受する側の求めるものについて考察します。

オルガンの椅子 当館蔵

第3章 うつわのある暮らし うつわと暮らす 食ともてなし おもてなし今昔

この章では、さまざまな器に注目し、人を結ぶ器の魅力を紹介します。昭和と平成、家族の在り方や暮らしぶりには多少なりとも隔たりがあります。核家族化による家族構成の分化、これによって年中行事の削減、簡素化は合理的な考えに基づく言い訳の盾にされがちです。近隣住民と触れ合う機会が薄れていく過程では、地域の慣習やイベントなどの情報交流も停滞しがちではないでしょうか。食と器をくらしの原点と位置づけて、もてなしや人的交流の復活によって、私たちの暮らしは変えられると思います。なぜって、それは、食とうつわが人と人を結び分かり合える唯一の方法であり、それが私たち日本人の文化そのものなのだから。

第4章 かわいい工芸品 好き!に出会う日 懐かしいがほぼ新しい

この章では、暮らしに潤いと活力を与えてくれる、くらしのなかの工芸の魅力を紹介します。工芸品は用と美、つまり使えてさらに美しいと思えること、このふたつを満たしてくれるのです。実用的なモノではありますが、使うことで、愛着が湧いてきます。さらに長く使い作り手の遊びの心がみえると、そこから作り手と使う側とのふれあいがはじまるように思っています。それは私たちの生活のなかにふと和やかな空気がそよぐ瞬間でもあるように思えてなりません。作り手と使う側のエンドレスな対話が聞こえてくる感覚に沿うことができる展示を目指しています。

(専門学芸員 田口 慶太)

緑釉絵付大皿 当館蔵

展覧会情報 香川県立ミュージアム10周年記念コレクション展 目からうろこのミュージアム!

8月4日(土)〜11月25日(日)

PartⅡ いつものくらし これ、いいね

10月2日(火)〜11月25日(日)

会場

特別展示室

開館時間

9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
※夜間開館:11月2日、23日 19:30まで

休館日

月曜日(ただし10月8日は開館)、10月9日(火)

観覧料

(全会期共通)一般800円/団体640円
(各会期)一般500円/団体400円
高校生以下、65歳以上、身体障害者手帳等をお持ちの方は無料