Vol.44 展示室だより
常設展示室1 修理完成記念特別公開 重要文化財「志度寺縁起絵」―描かれた海辺の情景 祈りの物語―
4月26日(金)〜5月26日(日)
志度寺(香川県さぬき市)の本尊十一面観音の由来や当寺建立・再興のいきさつなどを描いた志度寺縁起絵(志度寺蔵)は、代表的な中世の縁起絵として知られ、重要文化財に指定されています。この展覧会ではその修理完成を記念して、現存する志度寺縁起絵6幅を関連資料とともに特別公開します。
「絵解き」された志度寺縁起絵
海辺の霊場・志度寺では、鎌倉時代の末頃から南北朝時代に縁起絵が次々と作られ、その絵を前にした人々に物語を語り聞かせる「絵解き」が行われたようです。「御衣木之縁起」という1幅には、近江国(滋賀県)の大木が暴風雨で流れ出し、琵琶湖から淀川を経て瀬戸内海に入り、志度の浦に漂着した様子が描かれています。各地で祟りをなしたこの霊木は志度の浦で拾われて十一面観音に彫られ、それが志度寺の本尊になったというのです。絵を前にした人々は、海のかなたからやってきた霊木の過去に思いをめぐらせ、時空を超えた観音の霊力を感じ取ったことでしょう。

志度寺縁起絵の保存修理
中世の縁起絵として著名な志度寺縁起絵は、横折れが発生するなど作品の状態は良好といえるものではありませんでした。そこで適切な状態に戻して今後も永く保存していくため、文化庁の指導のもとで国・県・市の補助を得て、平成27年度から29年度までの3か年をかけて文化財保存修理事業が行われました。修理は、傷みが構造部分にまで及んでいたため、解体して各部材の補修や取り替えを行う本格修理です。美術工芸品の本格修理は多くが50年から100年の周期で行う必要があり、今回の修理も昭和26年度の修理から60年以上の時を経て行われ、軸木や裏打ち紙などが交換されました。
志度寺縁起絵の修理過程から
修理の過程で知り得る情報もあります。軸木6本のうち4本には、寛文11年(1671)の墨書銘があり、高松藩二代藩主松平頼重の命で修理が行われたことがわかります。また6幅のうち2幅には、肌裏とよばれる裏打ち紙として墨染色の紙が使われていたことが確認されました。この他、赤外線調査によって下図(図の下書き)があることも判明しました。本展ではこのような修理過程での新たな知見も紹介します。
保存修理を終えた志度寺縁起絵一地元香川でのお披露目会となる本展は、6幅すべてを鑑賞できる絶好の機会です。本展を通して中世の縁起絵の魅力を感じていただくとともに、貴重な文化財を次の世代へと引き継いでゆくための修理の意義について改めて考えていただければ幸いです。
(専門学芸員 上野 進)
ミュージアムトーク
5月5日(日)、5月18日(土) 各13:30〜


※いずれも「讃州志度道場縁起・二」