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最終更新日:2026年1月9日

日本建築の自画像―探求者たちの もの語り―

特集

——こんにちは、NEWS編集担当です。9月から始まる特別展ですが、どんな内容の展覧会ですか?

「日本建築」とは、何だろうか?を、様々な視点から問いかける展覧会です。

——そもそも、「日本的」ってどういうものを指すのでしょうか?

・・・。そ、そうですね。難しいですね。
この展覧会では、「日本的」な建築とは何か?を、自問自答しながら探求し、実際に制作していった建築家たちや、彼らを取り巻く時代背景や思想、そして制作された建造物の位置する場所がもつ風土や歴史性まで目配りして紹介しながら、「日本建築」とは何か?を問いかけていきます。

——建築の造形そのものだけでなく、その建物が制作された歴史的・地理的背景も紹介するということですね。

はい。美術と歴史、それぞれの手法で、「日本建築」へアプローチしています。

——地域にもこだわりを持って紹介しているのですか?

地域で育まれてきた建築文化の魅力を発信します。特に香川——四国——瀬戸内という地域性、海と山が近くにあり影響しあっているという地理的特徴を踏まえて、そこで育まれた建築・集落から近現代建築にまでつながる魅力に光を当てています。東京で開催する展覧会とは、一味も二味も違う展覧会です。

——瀬戸内国際芸術祭2019も開催していますよね。

この展覧会は、芸術祭のメニューの一つにもなっています。

——ところで「自画像」というのは?

明治以来、近代日本で形作られてきた「日本建築」というイメージを、3つの視点からなる複数のまなざし、これを「日本建築の自画像」として、捉えていきます。では、さっそく、第1の自画像から紹介します。

第1の自画像 —「日本建築」のアイデンティティを求めて—

——まずは、明治期からの話ですか?

明治以降の近代化=西洋化が進む中で、「日本」のアイデンティティを求めていった建築家たちの姿が、第1の自画像です。

——法隆寺や平等院、そして伊勢神宮といったお寺や神社が紹介されていますね。

「建築」という言葉を作った伊東忠太 (1867〜1954) の動きを中心に紹介しています。古建築の中に「日本」を求め、それを自ら制作する建築に投影していきました。

また、地域のアイデンティティとして日本古来「根元」の建築を求める動きは、堅穴住居の復元にもリンクしていきました。

——全国の遺跡で見られる復元された堅穴住居って、そういう文脈で作られたんですか。驚きです。

山内尋常小学校図面(部分) 平等院鳳凰堂をイメージさせる
ファサード 高松市立国分寺南部小学校蔵

第2の自画像 —「日本建築」を創る建築家たち—

第2の自画像では、それまでに様々な「日本的」なイメージを手に入れた建築家たちが、実際の制作にそのイメージを活かしていった姿を紹介します。

——時代では、昭和初期からの動きですね。

東京帝室博物館 (現在の東京国立博物館本館・1937年竣工) が再興されるにあたり、「日本趣味を基調とする東洋式」という応募規定でコンペが開かれました。「日本趣味」をどう解釈し表現するかが、問われました。

——「日本趣味」とは何か?ですね。

瓦屋根をいただく「帝冠様式」が、この時の1つの回答だったのです。

——そして、丹下健三 (1913〜2005) など、有名な建築家の名前が出てきますね。

彼らは、「日本的」なもの、「伝統」から、新しい「日本的」な建築を創造していきました。丹下健三の代表作、香川県庁舎(1958年竣工)は、近代的な素材(コンクリート、鉄、ガラス)を用いながら、柱と梁による構成や、襖や障子のようなサッシュなど、日本の伝統を再構成しています。

——五重塔のような、という話も聞きます。

また、建物だけでなく、周囲の空間にも建築家たちの視線が広がり、空間の中の建築というアプローチが出てきます。

——地域性に留意する視点が生成されていったのですね。

香川県庁舎 (市川靖史 撮影)

第3の自画像 —地域に住まう人たちにとっての「日本建築」—

——第3の自画像は、これまでとは趣が異なりますね。

ここでは、地域の人々が、日々の生活の中から蓄積し、紡ぎ出してきた姿を「自画像」として紹介しています。「日本建築」が制作される場からのアプローチです。

——海や山の建築、集落などを紹介していますね。

海と山が近い瀬戸内の集落、そうした環境で作られてきた建築を紹介します。たとえば、海の建築としての厳島神社や、山の建築としての豊楽寺薬師堂(高知県)。海と山をつなぐ意味では、金毘羅さんがあります。こうした伝統的な建築と、瀬戸内海歴史民俗資料館といった近現代建築につながる地域性を取り上げます。女木島や直島といった瀬戸内の島々でのフィールドワークの成果も交えて、紹介します。

——使う側からの紹介は、これまでの建築の展覧会にはありませんでしたね。

実業家白洲次郎や故国を逃れ日本にやってきたドイツ人の建築家ブルーノ・タウトらが民家を使いこなす姿や、団地といったコミュニティをデザインする建築など、住む側の視点から「日本建築」とは何かを問いかけます。建築は制作する建築家だけのものではない、という「自画像」を紹介します。

——なかなか、「骨太」な「自画像」ですね。

——最後に、NEWSをお読みの皆様へ。

設計図や写真に加え、建築模型や動画も用いた立体的な展示構成になっています。展覧会を見た後には、実物もぜひご覧ください。現地見学会なども予定しています。

「日本建築」というイメージが持つ豊かさを感じ、そして「日本的」とは何か、について考える機会にしていただけたら、と思います。

最新情報は随時ホームページで紹介しますので、お見逃しなく。

(主任専門学芸員 渋谷 啓一)

女木島(1957年)
女木島(2019年)

展覧会情報 特別展 日本建築の自画像 ―探索者たちの もの語り―

9月21日(土)〜12月15日(日)

開館時間

9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
※9〜11月の毎週土曜日、9月22日、10月13日、11月3日は20:00まで開館

休館日

9月24日、30日、10月7日、15日、21日、28日、11月5日、11日、18日、25日、12月2日、9日

観覧料

一般1,200円 前売・団体・瀬戸芸パスポート提示(1回限り)1,000円
※高校生以下、65歳以上、身体障害者手帳等をお持ちの方は観覧料無料

関連イベント

※8頁インフォメーションをご覧下さい。