地域連携グループの活動
香川県立ミュージアムの学芸課は、企画、収集管理、地域連携の3つのグループで構成されています。今回はこの中で、地域連携グループの活動について紹介していきます。
中期活動計画と地域連携グループ
地域連携グループは平成29年に発足した新しいグループです。このグループの発足には、香川県立ミュージアムの中期活動計画が関係しています。
中期活動計画とは、平成30年度から令和4年度までの5年間におけるミュージアムの活動方針を定めたものです。くわしい内容は当館のホームページに掲載していますのでご覧ください。
中期活動計画に掲げた3つの使命の1番目に次のようなことが掲げられています。
地域の人びとと地域活性化に取り組み、ともに成長するミュージアム
中期活動計画はミュージアムの活動すべてにかかるもので、一つのグループだけが担うのではありませんが、地域との関わりを考え活動していくという指針が地域連携グループの発足に大きく関わっています。
学習支援と地域連携
地域連携グループが発足する前には学習支援というグループがあり、小中高の学校や大学などの活動や生涯学習を支援する業務等を担当していました。学習支援業務は地域とのつながりとしてもとらえることができます。地域連携グループは、さまざまな世代の学習支援も含め、地域とミュージアムがつながりをもってどのようなことができるのかを考え、活動しています。実際の活動の中から2つについて紹介していきます。
学校学習の支援
学校における学習支援のひとつとして、ミュージアム活用研究会とティーチャーズ・プログラムという取り組みを行っています。
ミュージアム活用研究会(以下、「活用研」)は、当館を学校がどのように活用できるのかを、委員をお願いした学校の先生とともに考えていくものです。ここ数年、活用研で主として取り組んでいるのは、当館の収蔵品を学校の学習の中でどのように活用できるかです。学校の授業で、香川ゆかりの作品や資料がもっている豊富な情報を活かす方法を先生たちとともに考えています。
この活動の成果として、収蔵している絵画や立体作品の写真をカードにした「アートカード」、香川県と関係の深い芸術家イサム・ノグチの生涯を表した紙芝居風教材、高松藩の城下町を描いた「高松城下図屏風」を黒板に張り出せるようにした小型複製、丸亀藩の参勤交代の様子を描いた絵馬の小型複製等を制作してきました。活用研で検討するのは、これらの教材を単に制作だけではなく、それを使った具体的な授業プログラムの想定も行っています。貸し出せる複製をつくることを目的とするのではなく、多くの学習現場で利用してもらうことに重点を置いています。
ティーチャーズ・プログラムは、学校の先生を対象とした講座です。ここでは、活用研において検討・開発した教材とプログラムを紹介し、活用の促進を図っています。現場において利用する上での意見を募るようにしています。
ティーチャーズ・プログラムは、学校の先生を対象とした講座です。ここでは、活用研において検討・開発した教材とプログラムを紹介し、活用の促進を図っています。現場において利用する上での意見を募るようにしています。
活用研とティーチャーズ・プログラムは独立した別々の活動ではなく企画・制作から普及・浸透までの一連のつながりをもった事業として展開しています。ミュージアムが関わりながら、現場の先生方が主体的にミュージアムの収蔵する作品や資料を活用することを目指しています。


地域資料の発見と活用
取り組み始めたばかりの活動ですが、昨年度、県下の公民館で地域資料を用いた展示を開催しました。ちょっと変わっているのは、展示した資料は地元の方々に声をかけて出品されたものであったという点です。公民館と協力し、管轄区域に「ちょっと古い道具」「ちょっと古いモノ」の出品を促すチラシを配布し、その結果集まった資料を展示するという形式をとりました。
呼びかけと集約は公民館が担当し、展示構成や準備・設営はミュージアムが担当しましたが、分離した作業として行うのではなく、相互に協働しながら運営を行いました。
この事業の目的は、展示の開催ではなく、その過程にありました。呼びかけに応じて出品したものが展示というかたちで意味付けられることによって、各家に伝来するものや残されているものに地域のあゆみを示す資料としての意味があることに気付いてもらう。そこから地域で資料を伝え遺していく意識につなげていく、ということをねらいとした事業です。
背景には、災害被災における地域の文化遺産の喪失があります。東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨など近年に限っても多くの自然災害が発生し、その中で文化遺産を救済する取り組みが行われています。これらの中で、救済前に廃棄されてしまうケースも多数報告されています。地域のあゆみは、その地域がもっているもので語られることに気付いてもらうことで、失われていくことを食い止めることにつなげられないかという発想が事業開始の原点にあります。
出品された資料はミュージアムが収蔵するのではなく、各家にお戻ししました。地域自身が守り伝えていくことにも大きな意味があるとの考えからです。ミュージアムだけが収集、活用を担うのではなく、地域で保存や活用していく方向を考えるための試みです。


地域連携のために
地域連携グループでは今回紹介した事業の他にも取り組んでいます。今回紹介した事業が特に顕著ですが、「ミュージアムが何かを行う」事業だけではなく、「ミュージアムと学校の先生」、「ミュージアムと地域の人びと」というように、地域と協働することも視野に入れて活動しています。ミュージアムにとって、地域との連携は欠かすことのできない要素になります。どのようなかたちでつながることが、よりよい成果につながるのか今後も試行していきます。
(主任専門学芸員 御厨 義道)