vol50 収蔵品紹介
香川県指定有形文化財舞楽面(原・姫) 鎌倉時代 個人蔵(当館寄託)
舞楽の二ノ舞に用いられる咲面(左)と腫面(右)の二面で、もと青海神社(坂出市青海町)に所蔵されていたものです。同神社は崇徳上皇を祭昆に付した際の煙がたなびいた地に宮を立てたことに始まると伝え、煙の宮とも称しました。
二ノ舞とは秦摩とセットで舞われる喜劇的な演目で、咲面をつけた老翁と、腫面をつけた老婆が秦摩のしぐさをまねるもののうまく舞えない様子を滑稽な身振りで表現します。
咲面は大きく口を開けて哄笑する表情を、腫面は舌を出し、醜く腫れ上がってゆがんだ風貌をみせます。鎌倉時代後期の作とみられ、本県の古面では最も古い時代に属する優作です。
ところで興味深いのは、青海神社の近隣にある中世の神谷神社や白峯寺でも舞楽が行われたとみられることです。実際、神谷神社には中世の舞楽面が伝来しています。では、中世の舞楽面が当地域にあるのはなぜでしょうか?注意されるのは当地域では古代から中世にかけて、行政庁としての国衙が活動していたことです。近年の研究によれば、中世の国衙には「楽所」のもとで音曲舞楽を専門とする集団が活動し、また国衙の工房には道具・楽器類の維持管理を担う職人集団も配置されていました。国内寺社の護国法会で行われた神楽や舞楽は、国衙の楽所や工房に支えられていたのです。本舞楽面は、国衙周辺ゆえに伝来した可能性があり、讃岐国衙の研究にも手がかりを与えるものといえるでしょう。
(専門学芸員 上野 進)

参考文献:井原今朝男「中世の国衙寺社体制と民衆統合儀礼」
(「中世一宮制の歴史的展開 下」岩田書院、2004年)
藤沢章《窓・カマリア》1993年
高松出身の藤沢章(1923〜1998)は、砂漠の画家とも呼ばれ、中東・アラブ世界を題材に作品を描きました。
1991年のイエメン訪問をもとに描いた作品の一つが《窓・カマリア》です。
《窓・カマリア》はイエメンの古い建物でみられるカマリア窓というステンドグラスを画面いっぱいに描いています。カマリア窓は、藤沢が現地で撮った写真にも写っています。光の入り方によるガラスの色の変化を厚塗りで表現しており、壁にかけるとそこにカマリア窓があるように思えます。
さて、砂漠の風景やそこで生活する人々を描く藤沢の作品の中で、ステンドグラスを一面に描く《窓・カマリア》は異色といえます。しかし、作品をじっくり見ると、ガラスには向かいにみえる建物が描かれています。ステンドグラス越しに、藤沢の追いかけた砂漠世界の生活が存在しているのです。この作品もまたイエメンに生きる人々の日常を描いたと言えます。
(主任学芸員 鹿間 里奈)

油彩、カンヴァス 当館蔵
