Vol55 展示室だより
常設展示室1:高松松平家と県立工芸学校
寛永19年(1642)から、高松を城地として東讃岐12万石を治めた高松松平家は、明治4年(1871)の廃藩置県に伴い、東京への移住を命じられます。その際、松平家の財産管理を行う松枝会が設置され、高松で事務を行うことになります。明治23年には、陸軍省の管理下にあった高松城が松平家に払い下げられ、城内の整備が進められるとともに、松平家の人々の香川来訪の機会が増える契機となりました。
明治36年に12代当主となった頼寿は、毎年のように香川を訪れ、香川県教育会会長、香川県育英会会頭など県内でも多数の公職を務めました。廃藩後も続いた松平家と旧領地との強い結びつきによって、近代以降の香川に関係するさまざまな資料が松平家に残されています。
本展では、それらの中から、明治31年に設立された香川県工芸学校(明治34年香川県立工芸学校に改称、現 香川県立高松工芸高等学校、以下「工芸学校」)に関係する資料に着目します。工芸学校は、「勧業知事」と呼ばれた徳久恒範県知事のもと、石川県・富山県で工業・工芸学校の設立に尽力した納富介次郎を校長に招いて開校します。
開校に合わせて木材彫刻科の教諭として赴任した桑根常三郎は、松平家が初代藩主頼重を祀るため造営した玉藻廟に掲げる扁額、神殿内に奉納した獅子(図1)を制作しています。
大正11年(1922)に香川県内で行われた陸軍特別大演習の際には、松平家の別邸披雲閣(重要文化財)が大本営として使用され、摂政宮(のちの昭和天皇)御座所の家具の制作を工芸学校に依頼しています。
また、昭和9年(1934)、高松の栗林公園内に完成した松平頼寿の銅像の作者に選ばれたのは、工芸学校の第1期生として入学し、桑根の指導を受けた藤川勇造でした。
このように、松平家にとって香川での重要な出来事に、工芸学校の関係者が関わっている事例を見つけることができます。これらの資料を通して、松平家と工芸学校や工芸学校ゆかりの作家との関係を考えてみたいと思います。
(学芸課長 野村 美紀)

明治37年(1904)


図3 藤川勇造 松平頼寿伯爵像(試作)
昭和9年(1934)
頼寿が設立した、東京の本郷学園に残るエスキスから鋳造したもの。
栗林公園北庭に設置された松平頼寿像は、戦時中に供出されて現存しない。
展覧会情報
常設展示室1 高松松平家と県立工芸高校
令和4年1月2日(日)〜2月27日(日)
ミュージアムトーク
令和4年1月15日(土)、2月13日(日) 各13:30〜
常設展示室2:アート・コレクション Colors I 色彩に遊ぶ—野見山暁治・木村忠太
福岡県飯塚市出身の野見山暁治(1920〜)は、昭和27年(1952)にフランスに渡り、その後12年間パリで画業の礎を築き、帰国後は制作とともに東京藝術大学で後進の育成にあたります。平成26年(2014)に文化勲章を受章し、本年101歳を迎える現役画家です。
一方、高松市出身の木村忠太(1917〜87)は香川県立工芸学校に学び、中退後上京し、画業に専念します。野見山に遅れること数か月、昭和28年にフランスに渡り、以降終生フランスで活躍し、昭和59年に芸術文化勲章(シュヴァリエ)を受章。時に「魂の印象派」と評されました。
木村がパリで最初に出会った日本人が野見山でした。野見山は「明日のことを思うと怖ろしいが、見当のつかない異郷にあえてぼくたちは身を投げ出している。」と当時を回想しています(野見山暁治「異郷の陽だまり」生活の友社、2011年)。ともに戦後の混沌とした日本を脱し異郷の風土に戸惑いながら、それぞれの道を模索し見出していきます。今回は近年新たに収蔵した作品を初公開します。激しくも華やかな色彩を画面に放ち、ひたむきに色彩に遊ぶ二人の競演をお楽しみください。
(主任専門学芸員 窪美 西嘉子)


展覧会情報
常設展示室2 アート・コレクション Colors I 色彩に遊ぶ ― 野見山暁治・木村忠太
12月14日(火)~令和4年3月21日(月・祝)
ミュージアムトーク
令和4年1月16日(日)、2月19日(土) 各13:30~
常設展示室4・5 アート・コレクション Colors II 響きあう色彩 ― 江戸健
丸亀市出身の江戸健(1927〜2017)は、豊かな色彩の抽象画を多く描いた洋画家です。
江戸が色彩に強い思いを寄せるようになったきっかけに、師・猪熊弦一郎との出会いがあります。昭和23年(1948)春に上京した江戸が初めて猪熊宅を訪れた際、猪熊は江戸が持参した作品を「色がない」と評しました。江戸は後年、このことが色彩へと向かった原点だと振り返ります。その後、武蔵野美術大学を中退し、猪熊に師事した江戸は新制作協会で出品を重ねます。昭和50年には長く勤めた小学校教員を辞めてパリに発ち、8年間のフランス滞在中にはサロン・ドートンヌで活躍しました。
江戸の抽象画は滞仏以降、おぼろげな形の色面を重ねるようになり、響きあう色彩は深く静かな美しさをたたえています。青年時代の闘病や、世界各地へ旅したこと、そんな沢山の記憶が降り積もり、複雑な色の重なり合いに滲み出ているようにも思えます。
本展では当館のコレクションより、1950年代から2000年代にわたる作品をご紹介します。
(専門学芸員 一柳 友子)

展示会情報
常設展示室4・5 アート・コレクション Colors II 響きあう色彩 — 江戸健
令和4年1月22日(土)〜3月21日(月・祝)
ミュージアムトーク
令和4年1月22日(土)、2月27日(日) 各13:30〜