毎年恒例の特別展 はじまりとこれから―日本伝統工芸展・香川県美術展覧会―
日本伝統工芸展のあゆみ
昭和29年(1954)に始まり、今年で68回を迎える日本伝統工芸展(以下「伝統工芸展」)。高松では近年、1月の恒例行事となっています。今回は、全国10会場を巡回しますが、高松では昭和34年の第6回展から毎年開催しています(第4回展も開催)。高松以外で第6回展までに伝統工芸展を開催した地は、東京、大阪、名古屋、京都、福岡であり、全国的に見て、非常に早い時期から開催されていました。これは、高松が香川漆芸の地であること、日本工芸会の設立に、磯井如真、音丸耕堂が関わっていたことが関係していると考えられます。
昭和29年3月に開催された第1回展は、文化財保護法のもと「助成の措置を講ずべき無形文化財」として選定された作家の作品紹介でしたが、第2回展以降は、重要無形文化財保持者、日本工芸会の正会員、支部会員、正会員等の推薦を受けた者の作品のうちから鑑審査を経た作品が展示され、第7回展から現在と同じ公募展となり、誰でも出品できるようになっています。ここでは、あくまで作品本位に鑑査されるため、重要無形文化財保持者の作品でも落選することがあると聞きます。
「伝統」という言葉には古いものというイメージがありますが、伝統工芸展に出品される作品は、決して古い技法や意匠を固守するものではありません。伝統工芸展の第6、第7回展の趣旨にもそもそも、伝統継承ということは、単に古い技術を修得し、これを墨守することではない。伝統は生きて流れているものであり、芭蕉のいわゆる「不易流行」である。換言すれば永遠にかわらない本質をもちながら、しかも流れる水のごとく一瞬もとどまることのないのが伝統の真の姿である。」とあります。
この趣旨は、文言の変化はありますが、現在に引き継がれています。この趣旨に基づけば、伝統工芸展に出品される作品は、伝統的な工芸技術を受け継ぎながらも、意匠・造形・技術といったあらゆる面で現代生活にふさわしいものであると考えられます。
みなさんの生活にふさわしい作品、お気に入りの作品を見つけに、ぜひ会場へお越しください。
(専門学芸員 高木敬子)
〈参考資料〉
「日本伝統工芸展の歩み」日本伝統工芸展史編集委員会編集、社団法人日本工芸会発行 平成5年12月1日発行




特別展 「第68回日本伝統工芸展」
会期
令和4年1月2日(日)〜1月16日(日)
会期中無休
開館時間
9:00〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
会 場
特別展示室、常設展示室4・5
観覧料
650円、前売・団体520円
※高校生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方は無料
関連イベント
講演会
令和4年1月8日(土) ※詳細は8頁インフォメーションへ
陳列解説
解説動画を当館公式YouTubeで配信予定
県展 「審査に関するガイドライン」の導入
今年の第85回香川県美術展覧会(県展)の応募総数は1,044点、入選数は467点、入選率は44.7%でした。審査は7月27日からの3日間で、絵画(日本画)・絵画(洋画)・彫刻(立体表現)・工芸・書・写真の各部門でそれぞれ行いました。鑑査(入選作の決定)と審査(入賞作の決定)については、それぞれの基準を明確にするため、新たに定めた「審査に関するガイドライン」に沿って行いました。

審査の結果、これまでの日本画の主題には見られない新しい表現をした髙嶋香子の「オカリナ・ラプソディ」や、コロナ禍の社会をテーマとする西村静美の「蝕む」などが香川県知事賞に選ばれました。このように、鑑査及び審査の基準を明文化したことにより、なぜその作品が選ばれたのかが出品者や観覧者に伝わりやすい審査結果につながったと考えています。
審査団については、各部門とも1名の県外審査員と複数の県内審査員で構成する予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の流行という社会的な状況もあり、書と写真については県内審査員のみの構成となりました。審査団の在り方については、実行委員会等で検証し、専門的な知識を持った学芸員を起用したり、公開審査を検討したりするなど公正・公平で開かれた審査とするため、さらなる変革が必要だと考えています。
当館のYouTubeチャンネルでは、各部門の審査を担当した審査員による受賞作の解説動画を公開中です。審査方法や作品の評価のポイントにも触れていますので、ガイドラインに沿った鑑査及び審査となっていることがより伝わると考えています。ぜひ、ご覧ください。
(主任専門職員 櫻木 拓)

表現方法をじっくりと確認している様子がうかがわれる


当館公式YouTubeチャンネル ▶
