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最終更新日:2026年1月9日

香川県庁舎 重要文化財に

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2022(令和4)年2月9日、「香川県庁舎 旧本館及び東館(以下 香川県庁舎)」が国の重要文化財に指定されました。

当館でも「丹下健三 伝統と創造」(2013年)、「日本建築の自画像」(2019年)、「空間に生きる画家 猪熊弦一郎」(2021年)などの展覧会を通して、様々な角度から取り上げてきた香川県庁舎。この度「建築家丹下健三による戦後庁舎建築の最高傑作」と評価されたその内容についてご紹介します。

南庭から香川県庁舎東館を眺める。右の低層棟1階にはピロティが、正面の高層棟1階にはガラス張りのロビー中央に壁画が見える。 撮影:田村収

戦後の庁舎建築

香川県庁舎は1955(昭和30)年に設計され、1958年に竣工しました。設計担当は東京大学の丹下健三計画研究室です。当時の県知事・金子正則は「注文者である私どもは民主主義とは何ぞや、民主政治は如何にあるべきやと建築を通じ色々丹下研究室から教えられた」※1と述べており、庁舎設計に際して戦後の社会の在り方が強く意識されていたことが窺えます。

そして生まれたのは、新しい民主主義時代にふさわしい、県民に開かれた庁舎建築でした。低層棟では歩道に面した1階のピロティが屋内外を開放的につなぎ、県民は壁画のあるロビーや南庭に迎えられて庁舎へ自由に出入りできます。また、2階では県民が集うホールと県民の代表が集う議会場(当時)が向かい合っています。低層棟の隣にすっと立ち上がる高層棟では、エレベーターや水回りを中央部分にまとめたセンターコアが太い幹のように建築を支えているため、執務室は自由に間仕切り可能になりました。外観は鉄筋コンクリート造ながら、重厚感を抑えた梁や柱が日本の伝統建築を連想させます。

香川県庁舎の空間とデザインは戦後の庁舎建築の模範となり、昭和30~40年代には全国へと広まりました。

低層棟1階からピロティ南側を眺める。左の歩道(県庁通り)から右の南庭まで、段差のない開放的な空間が広がる。

芸術家との協働

1階ロビーの陶板壁画《和敬清寂》について作者の猪熊弦一郎は、金子兌の書簡の中で「私の今度の作意は茶道の精神、和敬清寂を四面に題しました、これこそ日本古来のデモクラシーの本体ですから」※2と綴っています。また、県庁ホールの椅子や知事執務机(当館蔵、3頁参照)などのインテリアデザインを手掛けた剣持勇は、1953年頃から近代日本調(ジャパニーズ・モダン)デザインの試作と発表を重ね、日本の伝統美をふまえた近代的なデザインを提唱、牽引していました。

新しい時代を見据えた芸術家たちの協働によって、香川県庁舎の空間に、人々が集うにふさわしい生気と豊かさが加わりました。

香川県庁舎は、重要文化財の指定に際して「意匠(デザイン)的に優秀なもの」「歴史的価値の高いもの」の2点で評価されました。今回の指定は、香川県庁舎の多面的な価値——庁舎建築が、総合芸術として戦後社会を表し、現在まで使われ続けている素晴らしさ——を、次の世代に伝えるきっかけになるでしょう。

(専門学芸員 一柳 友子)

引用註
※1 「香川県庁舎50」香川県庁舎50周年記念プロジェクトチーム、2009年、14頁
※2 金子正則宛猪熊弦一郎・文字書簡(1958年6月16日付香川県秘書室受付)、香川県文書館保管