ミュージアムガイダンスvol.45 調査は続くよ、どこまでも 「私の町にも映画館があった」後日談
昨年(2021年)秋に開催した常設展「私の町にも映画館があった」では、会期中たくさんの方にご観覧いただき、ミュージアムトークも大盛況でした。SNSでも数多くの投稿があり、幅広い世代に反響が広がったことを嬉しく思います。

新たな聞き取り調査
展覧会では、当時の映写技師、下足係、看板師など映画館に携わっていた方々の来館もありました。様々な職種の人たちから当時の様子をうかがうことで、さらに研究が深まりました。
その中で、高松市片原町で映画館「グランド劇場」を経営されていた方とつながりができました。詳しい聞き取り調査の結果、昭和の終わりから平成にかけての映画館事情が判明しました。バブル期の片原町再開発計画、歩合制によるフィルムの買付けと映画会社との関係、シネマコンプレックス進出による系列映画館の閉館など、映画館と経済の関連性が分かる新たな証言を得ることができました。
資料の収集、保管へ
今回の展示がきっかけで、当館に寄贈いただいた資料もあります。高松市一宮町にあった映画館「映楽館」で使用していた入場券やポスターなどです。寄贈者の父親が映画館を経営しており、「今では映画館の存在を知る人も減り、地域の歴史を伝えることができるなら。」と、貴重な資料を寄贈いただきました。
また、高松市内の映画館のチラシを寄贈したいという申し出もありました。その数なんと300枚以上。昭和20年代から30年代の高松市内での上映映画が分かる資料で、現在1枚ずつ丁寧に調査しながら、受け入れに向けた準備を進めています。

地域との連携
2年ほど前から、展示に向けて観音寺市と連携を進めました。当時の映画館関係者や資料をお持ちの方を紹介いただき、時には市職員の方と一緒に聞き取り調査を行いました。
さらには、観音寺市発行の「広報かんおんじ令和3年11月号」において、香川県立ミュージアム展覧会関連企画「特集 時にはキネマの話を」と題した10ページ以上にわたる記事が掲載されました。この特集は大きな反響を呼び、市役所に新情報が寄せられ、看板師の方への聞き取りや、未公開写真の確認など、その後も調査が進められました。市の担当者の熱意と当館に蓄積されている情報力、地域のネットワークすべてが組み合わさって成功した取り組みだと感じています。
なお、本展で展示した個人資料の一部は、観音寺市ふるさと学芸館で管理されることとなり、地元での活用が期待されています。
展覧会は、これまでの調査研究を広く知っていただく大切な機会です。加えて、展示をきっかけに、新たな情報が提供され、新資料の調査も続いていきます。展覧会は会期とともに終わりますが、当館のもうひとつの基本的機能である、資料の収集・保管事業へと、そしてさらに将来の展覧会企画へとつながっていくのです。
(専門職員 高木 理光)

昭和29年(1954)
観音寺市ふるさと学芸館蔵