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最終更新日:2026年1月9日

ミュージアムガイダンスvol.47 オニing(おにんぐ) ―こんな「つづける」があったのか!?―

ミュージアムガイダンス

令和5年1月。今年も「オニノコ」がやってきた!
始動から10年。これまでのプロジェクトを総括する。

みんなで楽しむ「美術系・芸術体験」プロジェクト

平成24年(2012)、2回目の瀬戸内国際芸術祭を翌年に控えたこの年、地元香川の中学生が芸術祭に参加できないか、美術の先生方がプロジェクトを考えます。それが「オニノコ瓦プロジェクト」。翌年の芸術祭では、女木島の洞窟内に中学生が作った鬼瓦3,000点が、ずらりと並びました。それは、ある意味“事件”でした。生徒と先生が作り上げたインスタレーションが、芸術祭の公式作品として認められたのです。搬入や展示は島民の方にもお手伝いいただき、みんなで楽しむプロジェクトとなりました。

「つづける」をプロデュース

オニノコが再始動したのは、芸術祭から3年後の平成28年のことです。きっかけは、当館の特別展「讃岐びと、時代を動かす」連携事業として「さぬきる」を計画したことにあります。中学生が地域の魅力的な「こと・もの・ひと」を切絵で表現し、4,000点もの作品で構成する巨大インスタレーションが誕生したのです。これを機に、オニノコの活動は、学校と博物館が連携した事業へと発展します。翌年からは、香川県教育委員会からの委託を受け「かがわ未来のアーティスト育成事業」の一環として、美術による社会貢献を目的とした「オニノコプロジェクト」を展開することになります。現在は香川県中学校美術教育研究会と当館の共同事業として、主役は生徒、指導は先生、プロジェクトを「つづける」パートナーが当館という構図が定着しました。

極上の「つづける」とは?

ここ数年、オニノコの作品展示は当館の正月恒例となっています。今年は久々にワークショップも開催し、来場者にはクラフト制作を体験してもらったり、中学生手作りのお土産を持って帰ってもらったりしました。会場では来場者と中学生のコミュニケーションが生まれ、自然と笑顔が広がります。美術には人を幸せにする力があることを改めて実感しました。活動を「つづける」ことで出会えた極上の光景です。

どうする博学連携

多様なアートシーンに触れた生徒たち。作品が飾られたという出来事。多くの人と関わった経験。「ああでもないや、こうでもないや」と試行錯誤しながら創り出してきたこれらの特別な体験は、彼らのこれからの学校生活や、社会生活にどのような影響を与えるのでしょうか。WEB広報誌「文化庁広報誌 ぶんかる」には、「子供時代の文化芸術体験は、大人になった時の文化芸術に関する行動等に、プラス方向への影響を与える」(橋本紀子“ぶんかるNews 012”、令和5年2月7日閲覧)ことが報告されています。博物館と学校が連携することで続いてきたこれまでの活動が、これからの社会を創ろうとする彼らの基盤のひとつとなることを願っています。

香川県立ミュージアムは「オニノコ」をはじめ、今後も学校の良きパートナーとしての役割を果たすべく、より積極的な活動にチャレンジしたいと考えています。

(主任専門職員 櫻木 拓)

※「オニノコプロジェクト」は、瀬戸内国際芸術祭2013で女木島の鬼ヶ島大洞窟に中学生が作った鬼瓦を展示したことに始まる。当初、参加した中学生やその作品を「鬼の子どもたち=オニノコ」と呼んだ。現在はプロジェクトを総称して「オニノコ」と呼ぶことが多い。

オニノコプロジェクトによる展示風景(令和5年1月)
オニノコプロジェクトによる来館者向けワークショップの様子(令和5年1月)