弘法大師空海生誕1250年記念特別展 空海—史上最強、讃岐に舞い降りた不滅の巨人 にて一挙公開。
空海その人のぬくもりを雄大に伝える名宝をはじめ、空海への強い思慕のもと、弘法大師信仰の広まりのなかで創出され継承されてきた御影や伝記、物語絵などの作品、そして空海誕生前後の讃岐の仏教美術の様相にも触れながら、県内に伝来する華麗で多彩な密教美術も展示します。ここでは香川ゆかりの展示作品をいくつかご紹介します。
空海の名文と名筆

場面替えあり
空海は文才に優れていた。24歳の時、出家宣言書にあたる「三教指帰」を著したのをはじめ、空海の秀でた文章力を示す事績は多い。「遍照発揮性霊集」(通称「性霊集」)は、弟子の真済が空海存命中よりその漢詩文を10巻に編集したもの。原本は現存しないが、今、香川県内に最古級の写本第三巻の断簡[図1]が伝わる。本品は奈良国立博物館の国宝残巻と條巻で、もともと『日本書紀』の平安時代(9世紀)の写本の紙背を再利用し『性霊集』を記した。『日本書紀』『性霊集』、両者いずれも国内最古級の写本であり、奈良博本と初めて同時公開が叶う。「草聖」と称され、名筆で知られた空海。「善通寺額」[図2]のように後世生まれた逸話も多く、真筆と伝わる墨蹟は少なくない。萩原寺の『急就章』[図3]は、空海の真筆として伝来し江戸幕府の5代将軍徳川綱吉の上覧にも供した。「急就章」は中国・漢時代に成立した文字学習書。空海は唐で王義之筆のものを入手し、帰朝後、嵯峨天皇に献上したという。

重要文化財

重要文化財

天台大師坐像・弘法大師坐像 大興寺蔵
香川県指定有形文化財

空海御影 寺外初公開
空海の姿(肖像)を、画像は11件、彫像は2件を一堂に集める。うち10件が香川県内に伝わる空海像だ。幼い空海を描く與田寺像は色鮮やかで、高い聖性を示す。大興寺の天台大師智顗像と一具の空海像[図4]は、建治2年(1276)の銘をもつ四国最古像だ。運慶の嫡男湛慶の弟子かつ東大寺流を自称する大仏師法橋佑慶によるもので、中世讃岐における天台と真言の二宗兼学を知る唯一の遺品でもある。威徳院像[図5]は、天明4年(1784)、京仏師二代清水隆慶の作で、天福元年(1233)に運慶の四男康勝が制作した東寺御影堂像(国宝)の模刻像という。2件の彫像は寺外初公開となる。このほか六万寺の熊野曼荼羅図に描かれた空海像も、類例が限られる逸品といえる。
香川の密教美術
空海誕生前の讃岐の仏教美術を代表するものに願興寺の乾漆聖観音坐像[図6]を挙げねばならない。奈良時代、漆は貴重で脱活乾漆の技法は官立工房等、都に限られた。古代讃岐と都の密接な関係を物語る重要な像である。
海上を通じてもたらされた中国・唐製の品がある。弥谷寺の五鈷鈴[図7]は、鈴身に四天王を配する華麗な梵音具で善通寺の国宝 鍔杖頭[後期展示]と同様、空海請来と伝わる。開法寺の阿弥陀曼荼羅[図8]は国宝 諸尊仏龕(金剛峯寺)[前期展示]に同じく白檀材に施された緻密な彫技が必見である。
空海の時代から時を経るが、多彩な密教美術品が伝わる。金刀比羅宮の「金剛界瑜伽略述三十七尊心要」[図9]は平安時代中期の温和な筆致による密教経典の優品で、長暦4年(1040)の奥書をもつ。極楽寺の両界曼荼羅図[図10]は、平成15・16年度の修理後、初の里帰りとなる。萩原寺の法華曼荼羅図とならぶ県内最古の密教絵画だ。行徳院の六字明王立像[図11]は、平安時代に遡る六字明王の彫像として国内唯一のもの。近年の修理により、その価値が再確認され香川県指定有形文化財となった。與田寺の不動明王立像および童子坐像[表紙]も、重要文化財指定後の修理を経て、今回初公開となる。修理において、像内墨書に運慶の父「僧康慶」の名が確認された。江戸時代、弘法大師九百年遠忌を控えて、東寺から與田寺に移入された尊像である。ほか法然寺の天弓愛染明王坐像[図12]は高松藩主松平頼重の発願による大仏師久七の作で、注目される江戸時代の密教尊像だ。
なお、会場では空海ゆかりの香川の景観も新進の写真家 宮脇慎太郎氏の作品で紹介する。香川というフィールドを通し、空海の時代やその足跡に想いを馳せていただきたいと思う。
(主任専門学芸員 三好 賢子)


乾漆聖観音坐像 願興寺蔵
重要文化財

金銅五鈷鈴 弥谷寺蔵
重要文化財
撮影 森林祐次

重要文化財


重要文化財


香川県指定有形文化財
撮影 佐々木香織

弘法大師空海生誕1250年記念特別展 空海—史上最強、讃岐に舞い降りた不滅の巨人
会期
4月22日(土)〜5月21日(日)
[前期]4/22〜5/7 [後期]5/9〜5/21
会場
特別展示室
開館時間
9:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日(ただし5月1日は開館)
観覧料
1,200円、前売・団体(20名以上)1,000円
高校生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方は観覧料無料
国際博物館の日(5月18日)はどなたさまも無料
関連イベントは巻末インフォメーションをご覧ください。