特別展 映画のレシピ
この秋、歴史と地域の2つの視点から映画をとらえる特別展を開催します。初めて日本で映画が上映されたのが明治29年(1896)。その後、香川県でも多くの作品が公開され、人々の身近な存在となっていく映画の足跡を、約160件の作品・資料からたどります。ここでは、展覧会の内容のうち、香川県での映画の歴史や、高松市にあった映画館の歩みについて紹介します。
香川初の映画は「のぞき見タイプ」
明治30年(1897)5月2日付の『香川新報』に、映画上映の広告が掲載されています【図1】。
この広告は、現在確認できる香川県での映画上映に関する最も古い記録です。「電気王エヂソン氏新発明ノ発音活動大写真」という文章から、観客はイヤホンを通して音楽を聴きながら映像をのぞき見る、「キネトフォン」という装置で映画を見たことが分かります【図2】。
現在のような投影タイプの映画上映は、フランスのリュミエール兄弟が明治28年12月28日にパリで一般公開したのが世界初です。この時使われた機器が「シネマトグラフ」で、日本では明治30年2月15日、大阪で初公開されました。3月には東京で、エジソン社の投影タイプ「ヴァイタスコープ」による映画上映も行われ【図3】、その後全国各地で公開されました。香川県においても、同年末までに高松で投影タイプの映画が上映されたようです(註)。
(註)『香川新報』明治31年4月17日付の東座の活動写真という記事で「説明者は昨年当座に於て興行せしものより優れることを誇言し」とあるため、前年には投影タイプの上映があったと考えられます。
映画にでてくる香川県
目玉の松ちゃんの愛称で親しまれた、日本初の映画スター尾上松之助(1875~1926)は、生涯1,000本以上の映画に出演しました【図4】。子ども達が尾上の演じた忍術の真似をする等、人気を博しました。尾上は、大正10年(1921)11月に香川県を訪れ、栗林公園で時代劇「荒木又右衛門」「石井常右衛門」のロケを行っています。観衆が多すぎて一時撮影が中止になるほどで、尾上の人気の高さがうかがえます。残念ながらフィルムは残っておらず、栗林公園がどのシーンで使われたのか確認することはできません。
菊池寛原作「受難華」(牛原虚彦監督)の映画撮影も栗林公園で行われています。雑誌『映画時代』【図5】では、数ページにわたってこの映画の特集記事が掲載されており、撮影時の観衆の多さが記されています。大正15年12月に公開されましたが、こちらも現存フィルムはありません。
「二十四の瞳」(木下惠介監督)は、小豆島で長期ロケをした作品として有名です。アメリカのゴールデングローブ賞外国語映画賞をはじめ、数多くの賞を受賞しました。
ライオンカンと南座
ライオンカンは大正11年8月、高松市百間町に市内5番目の常設映画館として開館しました。戦前には、県内初のトーキー映画館として昭和6年(1931)12月24日から「世界の与太者」(フレッド・ニブロ監督)を公開。その1週間後には日本初のトーキー映画「マダムと女房」(五所平之助監督)が、さらに翌年1月5日からは日本初の字幕付トーキー映画「モロッコ」(ジョゼフ・フォン・スタンバーグ監督)と、ライオンカンでは次々にトーキー映画が公開されました。
昭和20年7月、高松空襲で全壊しますが、1年後に復興。昭和25年からは洋画専門館となりました【図6】。昭和46年9月20日に閉館しボウリング場となるものの、昭和50年3月に再オープンします。平成11年(1999)11月5日に閉館するまで、ライオンカンは香川県を代表する映画館として人々に親しまれてきました【図7】。
南座は、高松市南新町商店街の南端で昭和21年7月29日に開館しました。当初は松竹の歌舞伎や芝居を主としていましたが、昭和25年4月からは松竹の封切映画館となります【図8】。南座は、日本最初の総天然色映画「カルメン故郷に帰る」(木下惠介監督)が香川県で唯一公開された映画館です。しかもこの作品は上映用プリント数が少なかったことから、7日間のみの限定公開でした。
「二十四の瞳」が香川県で最初に公開されたのも南座でした。昭和29年9月22日に南座で公開となり、1週間後に丸亀の蓬莱館、その1週間後に坂出松竹と、南座を皮切りに「二十四の瞳」は県内各地で順次公開されました。多くの作品を封切してきた南座ですが、昭和35年12月頃に閉館しました。
特別展会場では現存最古の日本映画「紅葉狩」(国立映画アーカイブ提供)をはじめ、リュミエール作品や現存する日本最古のアニメーション映画等、多くの貴重な映像もご覧いただけます。また、会場では2000年代以降の県内撮影ロケマップを紹介します。
この特別展が、映画を知る「レシピ(手順書)」となるとともに、地域の歴史や文化に触れる「レシピ(秘訣)」になればと思います。
(主任専門職員 高木 理光)



「神田錦輝館活動大写真の図」(『風俗画報』138号 明治30年) 個人蔵

絵葉書「奴の小さん」 大正6年 当館蔵


「禁じられた遊び」ポスター 昭和28年日本公開 国立映画アーカイブ蔵、画像提供:川喜多記念映画文化財団(ポスターデザイン 野口久光)


「南座」 昭和25年 当館蔵(撮影 森本康雄)
展覧会情報:映画のレシピ
会期
10月7日(土)~11月26日(日)
会場
特別展示室、常設展示室4・5
開館時間
9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日(ただし10月9日は開館)
10月10日(火)
観覧料
一般800円
前売・団体(20名以上)650円
※ 高校生以下、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方は無料
※ 菊池寛記念館の観覧券半券提示で団体料金(相互割引)
関連イベント 無料・要事前申込:講演会「無声映画の“音”の世界」
日本の無声映画上映には、洋楽器と邦楽器の伴奏がありました。その”音”の世界を復元映像も交えて紹介します。
日時
10月21日(土)13:30~15:00
講師
今田健太郎氏(四天王寺大学人文社会学部日本学科講師)
定員
230名(先着順)
申込期間
9月21日(木)~、定員になり次第終了
ほかにも「さぬき映画祭」と連携の映画上映会や、ワークショップ、活動弁士による公演会、担当者によるミュージアムトーク等イベントがたくさん!詳細は、展覧会チラシ、当館ホームページをご覧ください。